何か吐いてみる//
乙式、主に暇人干身がだらだらと萌えに任せて吐き出す場所です。創作戦国について主に吐き出しています。同人、腐要素、注意報常時発令中です。
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2009/01/06 (Tue) 現し世十題



 何だか、ふと書きたくなったので、戦国期真っ直中な近江の人たちをSSS崩れでちょこちょこ書いてみよう計画。
 
 [現し世十題]
 「幼い自分を殺して生きてゆく」(六角定頼+六角親泰)
 配布元:rewrite





 未だに、鼻腔へ戦塵がこびり付いていそうだった。
鼻腔だけじゃない、首にも腕にも脚にも口腔にさえそれは入り込み、臓腑から汚されていく感覚に陥る。いっそ、喉の奥へ指でも入れてしまおうか。吐き出してしまえれば良い。
 意味も無く、法衣の袖を払った。違う、分かってる、これは戦場へ纏っていった法衣ではない。この法衣の上に着慣れない鎧を着込まされていたわけではなく、今纏うこれは、しかと洗われた清潔な法衣。その筈、そうでなくてはならない、法衣は汚れ無く美しくあらなければならない。それを纏う人もまた同じ。
「………私は、承亀だ」
 ただの相国寺の僧、承亀でありそれ以外の名を冠することは無い。六角の姓なんてものは、この地を離れたその時に捨ててきた。捨てる他無かった私もそれを受け入れたそうして今の今まで生きてきた。それが何故、今更ここに立たされているのだろう。立つ筈の無かった戦場などというものに、兄の代わりとして立たされ、未だここにいる。六角の屋敷、観音寺城を臨むことの出来る庭先に。
 僧としての黒い法衣を纏ったまま。己の意思を握りつぶされたまま。
「しょう、き?」
 薄く目をとじ、息を浅く吸った。
「どうかなさいましたか」
 私を呼ぶ幼い声は背後より。吐いた息が消え去るのを待ち、私は振り返る。たおやかな笑みで頬を飾り、柔らかく小首を傾け、庭へ面した縁に立つ幼子を。一心に見つめ続けてくる両の目から、決して目を逸らすことなく一層、口もとの微笑みを強めた。
「亀寿丸様。供の者もつけず、お一人でこのようなところまでお出でになってはなりません」
「みんな、ととさまが、心配だから。亀寿がぬけだしても、きづかない」
「ですが気づいてしまったら、皆大慌てになってしまいますよ。早くお帰りになった方がよろしいのでは?」
 病床にある兄の、幼い嫡子は微笑みを携えた私の諫めを聞いているのかいないのか、縁に座りこみ始めた。地面についていない、袴に包まれた足を意味も無く揺らし、更にはその揺れる足を見下ろしていていい加減温和な私も無理やりにでも連れて戻そうか、口をひらきかけた時だった。
 足を見下ろしていた幼い顔が、あげられる。私が今、ここにこうして立っていなければならない原因ともいえる男の面差を、未成熟ならが受け継いでいると確かに分かる顔。
「ととさまは、死ぬのか」
 その口で、成された言葉。
 私の目もとは、引き攣らなかっただろうか。
「……何を、おっしゃっているのですか。そのようなこと、あるはずがありません」
 あってはならない、決して許されるものではない。兄が死ぬなど、そんなこと。
「でも、みんな、うわさしてる。もうととさまは、長くないかもしれないって。ととさまが、死んだら、お家はどうなるんだろうって」
 兄が死んでしまったら。私は。
顔のみ振り返っていた体を、全て縁に座る幼子へ向けた。大股で八歩ほどの距離を空け、幼子は私を、私は幼子を見据え続けるもしも、この幼子の父親が死んだとしたら。私は永劫、六角という名を背負い続けなければならない。捨て去った筈の名を冠し、生涯脱ぎ去ることはないと決意した法衣を鎧に代え生きていかなければならない。ただ、兄が死んだというただそれだけのことで。嫡男が幼子であるという、それだけの理由で。
 私に六角の名を捨てさせた男の死が、私の決意を泡に帰す。そんなこと、そのようなことそんな身勝手なこと、許されて、なるものか。
「しょうきは、どう思う。ととさまが死んだら、お家は、どうなる」
 許しはしない。
「お心安くなさって下さいませ、亀寿丸様。近江守様は決してお亡くなりになどなりません。ですから、近江守様がお亡くなりになった後の御家のことを聞かれましても」
「ととさまは、死ぬ」
 私を見据える幼子は、眉一つ動かすことなく。
「なんとなく、わかるから。だから、しょうきもむりしなくて、いい。ほんとうのこと、話して」
「ですから、亀寿丸様」
「しょうき」
 淡々と、私の名を呼ぶ。兄が死ねば、捨てることとなる名前を、表情を揺らがせることなく幼子は呼び私は小刻みに震えそうになる唇を、必死に堪えなければならなかった。解せず、許せず、私は唇を震わせかける。どうして、あの幼子はあんなにも平然としている父親が死ぬという事実を、あんなにも明確に口にすることが出来る。
 震えを抑え込む唇が、喉が、引き攣れた。
「つらいな」
 空気を震わせた言葉に。引き攣れた。
「しょうきは、つらい。でも、がまんして」
 お互いを隔てる八歩の距離は、未だにあり続ける。それと同時に、互いの両目に互いが映り込んだままだった。幼子は言う、真っ直ぐに私目掛け。
「亀寿を、たすけて。亀寿も、がんばるから」
 あれは何だろう。今、ゆっくりと持ち上げられた小さな白い手、私へ差し出されたそれたすけてと、差し出され黒い法衣が風に嬲られた。


 六角の名を、背負いたくは無かった。
 それは、幼子のような我儘だろうか。
 戦塵に汚されたくないと、喚くのは幼子の在りようだろうか。

「しょうき」

 父を失いたくはないと、喚く幼子は今どこにもいはしない。いるのは、手をこちらへ差し伸べる六角家の嫡男が一人。
 草履の裏が、地面を擦った。












 最初からあんなにも、戦国大名ですが何か、な定頼だったわけじゃなくて、段々「六角定頼」になっていったのだとしたら、萌えるなぁと。

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