何か吐いてみる//
乙式、主に暇人干身がだらだらと萌えに任せて吐き出す場所です。創作戦国について主に吐き出しています。同人、腐要素、注意報常時発令中です。
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2008/05/08 (Thu) 治長逸話


と、言うことで(何が)、大坂夏の陣記念的なものを公開する最終日八日になりました。七日から八日への変わり目に、山里曲輪で秀頼・茶々以下三十二義士が自害したんだなぁと、今更ながら感慨に耽りつつ。突発的に書きたくなったんで書いてみました、SSS。「老将座談」に載っている、治長逸話で多分格好良い部類に入る話を元に。ていうか、この治長は格好良すぎて本当に治長なのか疑いたくなりますね!(お前 いや、治長は本当は大分男前だって分かってますけど!ね!(必死だな)



 世界が、白む。
白く霞み始めた視界に何重もぼんやり浮かぶ紅は、糒蔵を囲む徳川兵の持つ松明の灯しだろうか。眼鏡もなく、視界すらおぼつかなくなってきた今の俺には、はっきりと判ずることは出来ないが。
「修理…無理をすることはない。私一人でも行こう」
 遠のき離れてを波のように繰り返す周囲を満たす音に紛れる、そんな甲斐殿の言葉に俺は首を横へと振った。はっきりと明瞭に横へ示したかったが、弱々しく否の意を表すことしか出来ない体が煩わしてならない。
「……平気だ、……甲斐殿。私も行く」
 鎧を脱ぎ、帷子一枚になった身から滲み滴れる生温い液体が何であるのか、考えるまでもない。故に、意識から外す。脇を抑える指の間を通りぬけ地面へ沁みを作り出すこれが何であるのか理解したところで、俺は甲斐殿を一人で行かせるわけにはいかないし、無論そのつもりもないのだから。
 行かなくてはならないのだ。俺は。
「分かった。……無理はするな」
「甲斐殿、今無理をせずして、いつすれば良い。ただ……」
 甲斐殿と並び歩く糒蔵を出た道。ぐるり囲む兵の輪を行けばおぼつかない視界であろうとも、明らかに他の兵とは纏う雰囲気の違う人影が二つ、並び立っているのがわかる。ああ、そうか、あれが。気づき理解しより一層強く、脇を抑える手へ力を込めるもう既に、生ぬるい液体に滑り余り用を成していない手ではあるものの。
 力を込め、強く。
「ここで力尽き、助命が為に切る腹が無くなるのは、困るな」
「……そうだ。老いぼれ一人が腹を切ったところで、向こうも物足りないだろう」
「わかって……いる、じゃないか」
 ぱたぱた、落ちる滴の音がひどく耳障りで、時間が無い、はやくしなくては。脇だけでなく、体の至るところから生温い液体が流れていることを告げる皮膚の煩わしさに、首を緩く降れば乱れ解けた髪がぼやけた視界の隅に揺れる。赤の滲む帷子一枚に、乱れた髪、さぞかし人とは思えぬ形相をしていることだろうな、今の俺は。
 甲斐と並び立つ二つの人影が前。
 徳川旗本、加賀忠澄と豊島正次という名であった筈だ。
「……先ず一つ、お聞かせ願いたい」
 小刻みにぶれる呼吸を必死に抑えながら吐きだす言葉に、加賀と豊島の二人が僅か顔を俺へ向けたのを感じる。先ず、聞くべきこと。
「御裏様は……千姫様は…無事、そちらへ送り届けられたか」
「ご案じ召されるな。姫様は無事、大御所様が陣へ迎えられになった」
 霞む瞼をとじまたひらく。
御裏様が無事大御所が本陣へお着きになったのならば、御身の安全は守れたと言ってよいだろう。御裏様の無事は、上様、御袋様双方の御意志それが守られ、良かった。安堵の息を、つきかけ脇を抑える手へ再び力を込めた。
 ならば次に、俺のなすべきこと、は。
「姫様をお迎えになったとあらば、聞き及んでおられよう。この戦役における全ての責任は、大野修理治長が負う。腹を切り、報いよう。であるから……お二方に、お願いしたき儀がある」
 絞り出せ声を、言わなければ、必ず。
肺へいくら空気を流し込もうと、喉に穴が空いたようにどこかへ流れていってしまっている錯覚に陥る。幾度も、幾度も空気を吸い込み吸い込み吸い込み、喉が、鳴る。
「どうか、上様並びにその御母堂様の助命に力を貸して下さらないだろうか」
 満ちる、静寂。
周囲を囲う兵士達の持つ松明燃え爆ぜる音を響かせるより他に、むせ返るほどの熱を孕む空気へ滲むものは何も無かった。甲斐殿は愚か、加賀や豊島も口をひらかず鳴らさず、ただ、僅か俺の指先が引き攣れるように動いた。皮膚の伝える、違和感に、引き攣った。
 視界は利かないに等しいが皮膚は、研ぎ澄ました神経は未だ、生きている。
俺はどのような顔をすれば良いのだろう、最後の望みにとこの場へ来たというのに与えられるのがこれとは…笑えば良いのか、そう、笑い飛ばしてやろうか。己自身を、並び立つ徳川が臣たる二人を。
「我らは、そのようなことを取り次ぐ役目ではない」
 放たれた加賀の言葉を合図に、ざわり沸き立った周囲の気配こそが皮膚の伝えてきた違和感の正体。さぁ、笑ってやろう盛大に盛大に、笑い飛ばしてやろうじゃないか。
 己自身を、
「甲斐…戻るぞ」
「……そうだな」
 俺と甲斐が背中を向けた瞬間、沸き立った気配が流れこんで来ようとも心の蔵は乱れない。笑い飛ばしてやるのだ。
「ふ……ふは、ふははははははははは!」
 全てを。
袖を翻し振り返る俺を、松明に色めく赤い血潮が彩る。さぁ、笑え笑え笑え笑え松明に彩られるのは血潮だけではないだろう、人ならざる形相であるのならばそれすら紅に彩らせようじゃないか。沸き立った気配は止まり満ちるのは俺が哄笑のみ。
「この体になったりとて」
 どいつもこいつも、動かない、どうした俺を捕らえたいのだろう動かないのかそれとも動けないのか。ああ、そうだとも。紅く、赤く、人ならざるものを捕らえられる筈もない。
 口が、引き裂けんばかりにつりあがり、
「各々方に捕えらるる修理にてはなしっ!」 
 満ちるは、哄笑。
 ただそれのみ。



 哄笑が糒蔵へ消えた頃、残された赤い潮だまりが、紅い灯しにぬめり光っていた。






「老将座談」曰く、この時の治長は鎧を着けず、白い帷子で髪を振り乱し、左の脇からは手傷を負ったらしく赤い血が滲んでいたとか。そんでもって、千がちゃんと送り届けられたか確認した後に、加賀と豊島の二人へ秀頼と茶々の助命に力添えしてくれないかと頼むも、断られる。その後に、二人が隙を見て自分を捕らえようとしているのを見てとって、「この体になったりとて、各々にとらえらるる修理にてはなし」とか、からから笑いながら蔵に戻っていったそうな。
ちなみに、甲斐殿は速水守久です。この時一緒にいたそうなんで。

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