何か吐いてみる//
乙式、主に暇人干身がだらだらと萌えに任せて吐き出す場所です。創作戦国について主に吐き出しています。同人、腐要素、注意報常時発令中です。
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2009/07/08 (Wed) 現し世十題



 もの凄くお久しぶりな、戦国期まっただ中な近江の人達をSSS崩れで書いてみよう企画。


[現し世十題]
「泣く位なら 生きてみろよ」(浅井亮政+井口経元)
※箕浦の戦いの話
配布元:rewrite









 己の声が遠い。
何を叫んでいるのか喚いているのかそれすらもう分からない。頬へ跳ねる水の冷たさだけがやたらと鮮明で、その癖すぐに掻き消える。
 迫ってきているのは何だ、黒い黒い地響きの塊。腹の底を揺るがし近づくそれに呑みこまれてしまえば全てがお終いだということは、分かっている。
「殿、時間のようです」
 俺の前へ跪くそいつの声が言葉が、妙な実感として伝えてくるから。黒い地響きの塊あれに飲み込まれたら全てがお終いで、もう、時間か。腹を切るか、逃れようとあがくかいやこの状況で逃れきるのは難しい。だったらむざむざ敵に、それも弾正忠の野郎なんざに首をくれてやるのは御免被る。
 切るか、腹。
「私が貴方の名を名乗ることを、お許し下さい」
「……何言ってんだ、又八」
 腰に佩いた脇差へ手をかけたのと同時だ。跪くそいつが井口又八郎が、そんなことを口走ったのは。
 地響きは着実に近づいてくる皮膚が震えるだというのに、俺はこいつの言ったことが理解できない何だそれどういう意味だ俺の名前を名乗るって何だ違うそこまで俺ぁアホじゃない。もう、手にしている。又八が、俺の名を名乗ることの意味その答えを。
 だからだ、だからこそだ。
「変なこと言ってんじゃねーよ。許せるかそんなこと」
 顔をそむけた脇差を握る手へ力を込めた腹を切る、それで済むことだこの首をあいつになんざ絶対ぇ渡してなんぞやるものかそうだ他の連中はうまいこと落ち延びさせにゃ又八もだ。あいつも落ち延びさせるそうすればまだ、浅井に再起は望めるだろ。とにかく俺は今、ここで。
 目が、合った。又八の目に俺の目かちあい眉尻のつり上がったあいつの顔がある。
「なら、俺も許さんぞ。絶対に、新三郎、お前を許さん」
 さざめく葉擦れの波が通り過ぎ俺を睨む又八の顔、地響きすら鼓膜に遠く遠く遠くあいつの喉の上下する様がどうしてあんなにもゆっくり、俺の目へ刻まれたのか。
「責を果たせ」
 こんなにも、その声が頭へ穿たれたのか。
「浅井を生かすのが、こんな有様引き起こしたお前の責務だろうが」
 責務、俺の、浅井を生かす、喉奥が締まる苦しさを必死に押し殺して口ん中に鉄錆臭い臭いが広がったことでやっと唇を噛んでいたことを知った。ここで俺が腹を切ることは容易いあっという間だ、それをするなと又八は言う許さんと俺を睨む浅井を生かせと言ってくる。何だじゃあどうしろっていうんだ畜生答えはもう手の中にある分かりきってる浅井を生かすためにこの俺自身が、責を果たすために、どうするべきかなんざ、明白で明白過ぎてひしゃげた声が、歯と歯の隙間から零れ落ちる。
「俺の、名を、名乗ることを、許す」
「ご容赦、有り難く」
 立ち上がった又八が俺を見た笑った眉を下げた、困った奴を見るそんな笑いだ。
「泣く位なら、生きてみろよ」



 そうか、俺は、泣いていたのか。



 





 又八というのは井口経元のことで、久政の妻であり長政の母親である阿古さんのお父さんです。激戦だったと言われる箕浦の戦いで、亮政の身代わりとなって討ち死にしたとする話が存在していますので、そんな感じにしてみました。
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